闘うコラム大全集

  • 2026.06.25
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第1200回記念対談 木原稔官房長官×櫻井よしこ 発足240日『高市政権』の“軍師”が明かす日本の行方

『週刊新潮』 2026年6月25日号

日本ルネッサンス 第1200回


「憲法改正」「皇室典範改正」「消費減税」「中国・ロシア・北朝鮮」︱。内憂外患の我が国で、高市早苗政権が発足して240日が経つ。折しも、本連載が1200回を数える今、政権の〝軍師〟にジャーナリスト・櫻井よしこ氏が「日本の行方」を縦横無尽に問いかける。


櫻井よしこ 木原さんの議員会館の事務所に初めてお邪魔しましたが、すごく楽しい雰囲気ですね。防衛大臣時代の写真や航空機の模型がたくさんあって、地元・熊本のゆるキャラ「くまモン」のぬいぐるみもいる。まさに〝木原少年の部屋〟ですね。


木原稔内閣官房長官 ようこそおいで下さいました。櫻井さんは『週刊新潮』の連載を続けて何年になりますか。


櫻井 今回で1200回なので24年でしょうか。


木原 1年間は50週だから、毎年50回分を書かれてきた。それで1200回とは、すごいことですね。


櫻井 今回はその記念となる対談に応じていただき、ありがとうございます。まず、今月21日で高市早苗政権発足から8カ月です。官房長官として、様々な思いがおありでしょう。


木原 そうですね。高市総理は安倍晋三元総理が果たせなかったことをやろうと奮闘中です。安倍政権は平和安全法制や現NSS(国家安全保障局)の創設などで苦労をされ、支持率を下げながらもやってこられた。高市総理も「国論を二分するような大胆な政策、改革にも、果敢に挑戦していきたい」と仰っていて、将来的に必ず国益に資する政策を「自分の代でやる」という強い意志に基づいた国家運営をされています。


櫻井 5月27日には、画期的な「国家情報会議設置法」を遂に成立させました。


木原 私自ら担当しましたが、官房長官はあまり法案を抱えることがない。どうも登壇もの(重要法案)では12年ぶりだったらしいのです。まだ道半ばですが、情報収集能力が低いと言われる日本にとっては、大きな一歩だと自負しています。


櫻井 様々な成果をあげている高市政権ですが、後半国会では皇室典範の改正が山場を迎えています。高市総理としては男系男子の血筋をしっかり繋げたい。そのお気持ちに揺らぎはないように見えますが、木原さんご自身は、どの点が最も重要だと思われますか。


木原 皇室典範の改正案は二つあり、一つは「皇統に属する旧宮家の男系男子を皇室に迎える養子案」。もう一つは、「女性皇族が婚姻後も身分を保持する案」です。この二つはいずれも皇族数の確保を目的とするもので、どちらか取捨選択するものでもありません。その点を国民の皆様に理解していただいた上で、連立与党としては、「養子案」が第一優先です。


櫻井 女系天皇論を擁護する一部メディアは、なかなか改正の本質的な部分を理解しようとしませんね。


木原 誤解も多いのですが、あくまで「女性皇族の身分保持案」は次代に繋がるものではありません。衆参正副議長のとりまとめでは、「今上陛下から秋篠宮皇嗣殿下、次世代の悠仁親王殿下という皇位継承の流れをゆるがせにしてはならないことについては、立法府としてもこれを確認する」とされています。


櫻井 オールドメディアの報じ方に問題があるとしか思えません。普段はリベラル系の朝日新聞と、どちらかというと保守系の読売新聞が対峙するわけです。ところが、今回は驚いたことに「読売」が「朝日」より踏み込んで、女性・女系の継承をあらかじめ封じようとしているという持論を展開。正副議長案が出された時には「改めて有識者会議を設け、議論をし直すべきだ」と、ちゃぶ台返しまで求める始末です。


木原 確かに新聞報道では「産経新聞対その他」という構図になっています。


櫻井 官房長官として、もどかしさを覚えるのは当然です。国民の一人として気になるのは、女性皇族が結婚後も身分を保持して、夫と子供に皇族の身分を与えれば女系天皇への道が開けてしまうことです。これは議長案に盛り込まれた〈皇室の歴史に整合的〉という文言で防げると考えますか。


木原 政府の有識者会議の報告にも、幕末の皇女和宮(かずのみや)は、徳川十四代将軍家茂(いえもち)と婚姻した後も、内親王の身分を持ち続け、家茂が皇族となることはなかった例が引かれており、この考えでしっかり整理することができると思います。


安倍総理の念願


櫻井 分かりました。次に肝心の男系男子の血筋を引く方々の「養子案」は、どのように制度設計を進めるのでしょうか。今は四つの旧宮家が男系男子を擁していらっしゃいますから、皆さん養子になられてもいい。私はそう考えますが、官房長官としては言いづらいでしょうか。


木原 そうですね。衆参正副議長のとりまとめでは、「本人の意思を考慮した養子となり得る者の年齢」ということが、養子の制度設計に関し述べられています。


櫻井 年齢要件はつけない方がよいのではありませんか。赤ちゃんの時から皇族として育てればよいでしょう。確かに、民法では「15歳未満の養子縁組は親など法定代理人の承諾を要する」とありますが、皇室は特別な存在だと思います。


木原 具体的な制度設計はこれからですが、未成年の子を対象とするとした場合、職業選択や居住移転などの自由が制限されることについて、きちんとした判断ができるのか。例えば、15歳は昔なら元服の年で、十分判断できるでしょうが。


櫻井 人権が制約されると疑問視する声もありますが、古来の伝統をお守りになって活躍していただくためには、若い方にもお願いしていいのではないでしょうか。


木原 もちろん様々なお考えがあると思いますが、まだ具体的には決まっておりません。


櫻井 そういう意味ではこれからが大仕事ですね。安倍総理の念願でもあった大きな課題を一つ解決すれば、高市総理への評価は高まる。その延長線上には、国の基を正していくという意味での憲法改正があります。総理も1年以内という目処を仰っています。先の衆院選で3分の2超えの勝利を得たのであれば、死に物狂いで国会議論をして、9条2項の削除まで踏み込んでほしいと切望します。


木原 高市総理は憲法改正について自民党総裁として仰っていますが、私は一議員の立場でしかお話しできません。自民党の改憲案には4項目あって、1番が「自衛隊明記」。実質的に「9条」の問題です。次に「緊急事態への対応」、「参院の合区解消」、「教育の充実」が続きます。では、この1年で何ができるかと考えれば、次の参院選は2年後までないので、与党の議席構成は変わらない。


櫻井 憲法改正は手続き上、衆参それぞれで議員定数の3分の2の賛成を経て、最後は国民投票が必要です。


木原 その通りなので、はたして1年後に「9条」改正の発議ができるのか。高いハードルがあります。衆院では可能でも、参院は自民と維新の議席を合わせても過半数に満たない。国民投票までたどりつけないなら、与野党で合意が得やすい「合区」から手をつけ改正の一歩とする。そうすれば「9条」や「緊急事態」も国民に受け入れられやすくなると思っています。


櫻井 高市総理の下、自民党の党是である憲法改正に取り組むことは高く評価します。でも約80年間待った末、「9条」に手がつけられないとなると、国民の間に失望感が生じると思います。


木原 その一方で「改正できた」という達成感も生まれると思います。次なる改正に向けたステップと、前向きに捉えることもできます。


長期戦への備えを急ぐ


櫻井 前回衆院選で自民の公約だった消費減税は国民の関心が高い。1%で早期実施という話も聞こえてきますが、実際どうなる見込みですか。


木原 私からは「政府として社会保障国民会議の提言を受けて考える」としか言えないところです。ただし、高市総理は、自民党総裁になる以前から食料品にかかる消費税率を「ゼロにしたい」というご持論があった。具体的な制度設計については「国民会議」における議論の結果を待ちたいと思います。


櫻井 それこそ時間をかけたら意味がない。2年後に「給付付き税額控除」に移行すれば、再び消費税の税率は元に戻るのでしょう?


木原 党の公約では、消費減税は導入してから2年間限定という形になります。


櫻井 なるほどね。


木原 中東情勢が厳しい状況では早期の消費減税が前提ですが、1%でより早く実施すべきか、遅くても0%の方がいいのか。その辺りを含めて国民会議で議論が進むことを期待しています。


櫻井 消費者からは〝1日でも早い方が嬉しい〟という切実な声も出ていますが、ここでも報道の仕方が問われています。TBS系「報道特集」は〝ナフサ不足で日本は6月に詰む〟などと報じて、視聴者に不安が広がりました。もっと政府が分かりやすく説明する工夫をしないと〝情報戦〟で劣勢に立たされませんか。


木原 まさにそう感じます。そこで今年5月からは佐伯耕三内閣広報官が、SNSの「X」でアカウントを作り情報発信をしています。開始から1カ月で約10万フォロワーを獲得して、まだまだ増え続けています。


櫻井 見ている方、ものすごく多いですね。


木原 今後もメディアが取り上げない話題や、ちょっと違った角度から取り上げられてしまうテーマを中心に、エビデンスをもって正しい情報を示していきます。


櫻井 佐伯さんの明るいキャラクターが好印象を与えています。彼には「くまモン」みたいな愛される雰囲気を感じますね。きちんとした情報を発信し続けていれば、国民も理解すると思います。内閣の支持率に関わる大事な仕事ですね。大事といえば、日本の安全保障環境は激変し続けていて、先日は中国の習近平国家主席が7年ぶりに北朝鮮を訪問しました。そこで習氏は朝鮮労働党の金正恩総書記に「非核化」を求めなかったというのが大方の解釈ですよね。日本を取り囲む中朝とロシアは核を保有する専制国家。そう考えると、年内改定を目指す政府の国家安全保障戦略の基本指針「安保3文書」で「核」を論じないのなら、国民への責任を果たせるのか甚だ疑問です。


木原 私の立場ではなかなか言いにくいことですが、中朝の軍事力の増強、あるいは中露、露朝の連携強化は事実です。特にロシアによるウクライナ侵略で、無人機の大量運用による新しい戦い方が世界中に浸透しました。しかも、ウクライナでも中東でも昨今の戦闘は短期で終わりません。長期戦への備えを急ぐ必要があります。まさしく今、「3文書」を作るにあたり、そうした安保環境の変化に迅速に対応すべきです。ただし、櫻井さんご指摘の「核問題」はなかなか話しづらい。日本は自らの国は自ら守るとの強い覚悟を持ち、国民の命と平和な暮らしを守り抜く。「3文書」については、これから自民、そして日本維新の会からも提言が出てくる予定で、そこから具体的な内容を詰めていきます。


櫻井 木原さんは第2次岸田第2次改造内閣で防衛相を務め、今でも省内で語り草になるほど意欲的に取り組まれた。高市政権における小泉進次郎防衛相の活動は、どう見られていますか。


木原 小泉防衛相はコミュニケーション能力と発信力が高い。日本の立場を各国に理解してもらうべく頻繁に各国を訪問しています。


櫻井 ご自身が防衛相だった頃と比べて如何ですか。


木原 今の日本は防衛力を高め予算を増やしていく中で、周辺諸国の理解を得る必要がある大事な時期です。小泉防衛相のやり方は今の時宜に適っています。


〝日清戦争前夜〟


櫻井 4月21日に政府は「防衛装備移転三原則」の改正、いわゆる「5類型の撤廃」を行いました。これにより日本の防衛産業が生産する武器装備品は外国に輸出できるようになり、アジアのみならずヨーロッパ諸国も「本当によくやってくれた」と驚くほど好意的な反応を示してくれました。その当時は、木原さんも政権への支持率が落ちると懸念されていましたが、結果は微減でした。


木原 まさしくそれは諸外国に対する説明が功を奏して、正しい理解が得られた結果だと思います。もう一つは韓国との関係がうまくいき始めたことも大きい。私が防衛相時代、約6年ぶりに日韓の防衛交流と協力を再開したのを契機として、総理のシャトル外交が可能にまでなりました。日韓の連携強化は、日米、米韓関係にとっても良い方向へ作用すると思います。


櫻井 日韓関係が良好な一方、前述した中朝会談では中国が北朝鮮の核を認めつつ懐柔しようとしています。北朝鮮の日本海側にある旧日本軍が作った羅津(ラジン)港。そこへのアクセス権を中国が得ようと目論んでいると指摘されてもいます。そうなれば、大げさな言い方ですが〝日清戦争前夜〟のような緊張が生じる。もっと安保論議を加速しなければ手遅れになりかねない。


木原 高市総理は、国交がない北朝鮮と首脳会談をやりたいと仰っています。最優先の課題である拉致問題の解決が主な目的ですが、もちろん日中関係においても北朝鮮問題は重要なテーマですから、引き続き真剣に考えていきます。


櫻井 今後も高市総理と木原さんのチームに大いに期待します。今日はありがとうございました。

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