闘うコラム大全集

  • 2026.08.27
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日ウクライナ、ドローンの共同生産を

『週刊新潮』 2026年8月27日号

日本ルネッサンス 第1207回


8月13日、ロシアのプーチン大統領がわが国の北方領土に初めて上陸した。高市早苗首相が「断じて許容できない」と抗議すると、メドベージェフ前大統領が「好きなだけほざけばよい。しかしそんな言葉にはなんの意味もない」と嘲笑した。中国は「戦後国際秩序を守れ」つまり島はロシア領だと素早く反応した。


米国務省は「北方領土の日本の主権を認めている」と発表、ウクライナ外相は「常に日本と共にある」と宣言した。


プーチン氏の対日挑発が各国の連鎖反応をひき起こし、東西対立の構図を浮き彫りにした。ロシアが完全に中国の従属勢力に落ちぶれ果て、わが国が最も警戒し恐れるべき事態が出現したのだ。


安倍晋三総理がプーチン氏と27回も首脳会談を重ねたのは、中露分裂はかなわないまでも、ロシアが中国に取り込まれる時期を少しでも先延ばしにし、その間にわが国の力をあらゆる分野で強化するためだった。しかし、眼前の現象は日本の最大の苦難が私たちの準備が整う前に現実化しつつあることを示している。


わが国外務省は明らかにプーチン氏の行動を予測できておらず、日露関係の展望を前向きにとらえていた。


プーチン氏の挑発に高市氏が激怒した。「プーチン氏の行動は中・長期的関係回復を困難にする」との首相発言は短期的関係回復も無理、という意味だと官邸情報筋が解説した。


ウクライナ侵略戦争開始以来、ロシアは国力を落とし続け、中露関係は中国優位に傾き、中国の顔色を窺うプーチン氏の対日姿勢は厳しさを増す。昨年8月30日、新華社の取材でプーチン氏は日本が「ロシアと中国の脅威」を口実に「軍国主義復活を進めている。ナチスドイツと日本の軍国主義に、ソ連及び中国人民が共に戦ったその記憶こそ、我らの関係を持続させる力だ」と力説した。


プーチン氏が中国の対日非難「新型軍国主義」に従う形でわが国を非難したのはこの時以来か。プーチン政権は内外共に行き詰まっており、中国の支援なしには立ち行かないのだ。


「戦争を止めるべきだ」


ウクライナ戦争は明らかにロシア劣勢に傾いている。ロシアの軍事政策専門家の小泉悠氏は、ロシア人新兵は戦場に送られると殆ど全員がなんと、10~30分で命を絶たれると指摘した。ウクライナのドローン攻撃はここまで精緻になった。


だがウクライナはそこにとどまらず対露攻撃戦略を進化させている。石油精製施設など個別の標的を超えてロシア国内のインフラ、流通体系全体を、経済が成り立たないところまで破壊してプーチン氏を追い詰める戦略に移行した。プーチン氏は単なるガソリン不足ではなく国家機能の停止、国家衰退の危機に直面しているのだ。


ロシアと世界一長い国境を接するカザフスタンのトカエフ大統領が、7月25日の首脳会談でプーチン氏に語りかけた内容が世界の耳目を集めた。これまでウクライナ侵攻を責めたことのなかったトカエフ氏が「戦争を止めるべきだ(conflict should be frozen)」と公開の場で迫ったのだ。


「カザフスタンはこの戦争の意味を理解できない。我々はウクライナを主権国として認めている。私のつまらない(humble)意見を語ることにしたのは、そのように頼まれたからだ」とも語った。


これは二つのことを意味する。第一にロシアの味方陣営も含めて国際社会ほぼ全てがプーチン氏の戦争に否定的で、ロシアの孤立が深まっていること。もう一点は、これまでロシアが圧倒的優位の立場にあった中央アジアの国さえロシアの戦争を見限っていることだ。トカエフ発言はプーチン・ロシアの衰えを鮮やかに示しており、否応なく膨らむのがその背後の中国の存在だ。


今年5月、プーチン氏はトランプ大統領訪中の4日後に北京を訪れた。習近平主席は表面上、丁寧に遇したが、プーチン氏が成果を得たとは言い難い。まず北朝鮮との関係である。


プーチン氏は北京訪問後、その足で平壌を訪問する可能性があると、多くのメディアが報じたが、結局訪朝はなかった。米紙『ウォールストリート・ジャーナル』(WSJ)は7月13日、リンリン・ウェイ、トーマス・グローブ両記者の記事で、プーチン氏はかねて中露北朝鮮首脳会談の実現に動いていたが、中国が了承しなかったと報じた。そして習氏自身が6月8・9日、平壌を訪れたのだ。北朝鮮の主たる保護国(patron)は中国だ、ロシアではないと示すためだったとWSJは指摘した。ウクライナ戦争で北朝鮮にまで頼らざるを得ないロシアが、パトロンとして中国と並び立つことなど許さなかったと見られている。


日本製パトリオット


もう一点、プーチン氏は人民元の基軸通貨化に抵抗してきた。しかし、ロシア原油の取引通貨はすでに人民元だ。設立間近の上海協力機構(SCO)開発銀行の決済も人民元で行われる。人民元の経済圏は大きく広がるが、プーチン氏は中国の力に抗えなかった。


弱体化するロシア。強大化する中国。熾烈さを増す対日圧力。外交の場での抗議だけでは事態は決して改善しない。わが国はどうするのか。幅広い取材の結果、判明したのが小泉進次郎防衛大臣の提言だ。ウクライナとの最新鋭ドローンの共同生産に踏み切ろうというのだ。


力しか信じない中露を抑止するにはこちら側の力を強化するしかない。かといってわが国は中露のような巨大な軍事大国にはならない。今、軍事紛争の主役はドローンだ。ウクライナはその生産で質的にも、恐らく量的にも世界最先端を行く。それでも国民を守るにはウクライナはまだまだ多くのドローンを必要とする。そこでわが国が共同生産に踏み切り、ウクライナを扶(たす)けようと小泉氏は構想中だ。ドローンの共同生産はわが国を軍事的にも経済的にも扶け、国益にかなう。


ゼレンスキー大統領は優れたドローン技術移転の見返りとして、日本のパトリオットミサイルを欲している。パトリオットは敵の攻撃から国民、国土を守る迎撃用のミサイルだ。攻撃用ではない。


米国がパトリオットのライセンス生産を認めているのはドイツとわが国だけだ。米国のミサイル不足で日本が製造して米国に輸出する道も検討されてきた。今、日本製パトリオットのウクライナへの輸出を前向きに論じるのは意義あることだ。


交戦国への直接輸出には懸念があるのも確かだろう。しかし小泉氏はこれまでにNATO事務総長のルッテ氏やスウェーデン、オランダの国防大臣から「直接ウクライナへの輸出が困難なら、わが国経由で是非」 と要請されている。それも検討してよいはずだ。

 

ウクライナを扶けることはロシアの戦う意志を挫くことにつながる。日本のドローン能力の向上は中国の対日強硬策への抑止力になる。私は小泉氏の考えを強く支持するものだ。

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